私のブルガリア体験:ブルガリアに行かれた方の体験談や最近のブルガリアの様子などをご紹介します。

■ 西浦喜八郎 氏 個展 THE POWER OF PRAYER ~NEW CALLIGRAPHY~ 




概要

題名:THE POWER OF PRAYER ~NEW CALLIGRAPHY~

期日:平成24年5月14日~6月11日

場所:ブルガリア・ソフィア市 National Gallery for Foreign Arts

 

ごあいさつ

 このたびは、ブルガリアと日本の多くの方々のお陰で素晴らしい個展を開催する機会をいただけた事に心よりお礼を申し上げます。
書を始めてから今年で35年経ちました。「文字を綺麗に書く」「集中力を高める」「楽しい時間を過ごす」など色々な目的があって書を続ける方もいらっしゃるでしょうが、私の場合は何も考えず意識もせず書を続けてきました。書を追いかけたと言うよりも、気付くと書がいつも傍にいたと言うのが正しいのかもしれません。しかし、近頃私の書を皆さんに見ていただく機会が増えて参りました。そして「何故書をしているのか?」「私にとって書とは何か?」「書を通じて皆さんに何を伝えたいのか?」を考えるようになりました。傍に付いてきた書を追いかける機会が増えてきたのです。この三つの問いに未だ満足いく答えを探せてはいません。しかし、今回素晴らしい展示の機会を頂き、今までの中で得ているアイデアを作品に込めてご紹介しようと思います。
まず、書とは何かを考えてみると、書は東洋の文化の根幹を成している芸術と思います。それは文字こそが東洋文化の重要な要素であり、その文字を表現する書はまさに東洋文化そのものだと思います。その中で日本文化の書とは、実用性を追求するだけでなく、まさに「聞こえない音楽」であったと思います。これこそが、中国や韓国文化にある素晴らしい整然とした美しい文字列と空間表現には無い日本文化としての要素であると考えています。禅僧の墨蹟、貴族達のかな文字などは、美しい装飾と文字で、書かれている内容を伝える目的を持つだけではなく、文字の線や色彩などあらゆる要素が様々な音を奏で、その空間に見る人がメロディーを感じるものであり、そのような書こそが、日本で大切にされてきた書の流れであり、日本文化としての書であると私は思っています。
この事をベースに今回は大きく2つのパートに分けてみました。1)ビジュアルとしての書と2)音楽としての書です。この二つの要素は書と言うアートにおいて少なからず共存するものではありますが、ここで言う区分けは、その要素を主テーマとしてフォーカスしたという意味です。ビジュアルとしての書は、陰影、立体感、色彩差などをデフォルメして西洋の技法である油彩の技術を利用して表現してみました。書は文字を書くことから、「読む」と言う動作がはじめに来てしまいがちです。これにより書かれている文字の言語地域の方には分りやすいものでは有りますが、その言語を使用しない地域の方には、書かれている内容を理解していただく事は難しくなるように思います。この事が東洋地域の書が中々国際的芸術としてその地位を確立するに一歩足りない所であると感じています。そこで、「読む」と言う地域性が出る要素を一旦横に置き、万人がまず感じていただける「ビジュアル」の要素を引き出して表現してみようと試みました。
 次に、音楽としての書です。書の大切な要素は、点、線、濃淡、動き、空間等と考えていますが、書はこれら要素の様々な表現により全体として無数のオーケストラ的表現が行われていると考えます。これはあたかも、一音一音の強弱、トーン、流れ、休符等により表現される無数の音楽と似ていると思っています。つまり、音楽が「聞こえる音」である事に対して、書は「聞こえない音」であると言えるのかもしれません。ここでは書かれている内容を作品の「主題」あるいは「テーマ」と考え、それを表現する聞こえない音として、点、線等を配置して作品作りに取り組む事にチャレンジしてみました。これにより、読んでいただいて理解し感じていただくプロセスだけでなく、書に有る音を感じてそのテーマを感じていただく事を目標として作品作りに努めてみました。
私は、書の奥深い領域の中、書の国際性と、言語等に左右されない書の世界を追求し、もっと誰もが親しみを持って接し、楽しめる書を探していきたいと考えています。つまり「読む書」に加えて「感じる書」が追及できればと考えています。今回このような素晴らしい機会をいただけた事は、私にとって、身に余り、かつ緊張を強いられる事ではありますが、それよりも私のこのチャレンジを皆様に見ていただき、更に精進する素晴らしい機会を頂けたと思っております。
 最後に、ブルガリア文化省、在ブルガリア日本国大使館、在日本ブルガリア大使館、National Gallery for Foreign Arts. 日本ブルガリア協会はじめ多くの方々のお知恵とお力によりこの機会を得られました事に重ねて心より深くお礼申し上げます